アメリカの薬学システム

2009年5月22日 (金)

州間における薬剤師免許の移動

先日メリーランド州の薬剤師免許のためのOral English Competency Test(口頭英語能力試験)を受験してきました。
そこで今回は薬剤師免許の州間での移動について書きたいと思います。

アメリカの薬剤師免許は州ごとに発行されます。
従って、州を移動するためには移動先の州の薬剤師免許を取得しなければいけません。
薬剤師免許の移動の方法は大きく分けて2種類あります。
1つ目はScore Transferという方法です。
通常薬学部を卒業するとNAPLEX(薬剤師国家試験)を受験します。
NAPLEXの申し込みの際に、どの州をPrimary State(主要な州?)として受験しNAPLEXの結果をどの州に送って(Score Transfer)欲しいかということを記入する欄があります。
NAPLEXの結果を送る(Score Transfer)にも1州につき100ドル近いお金がかかるので、アメリカのすべての州に送ることは現実的ではありません。
例えば私はフロリダの大学を卒業したのでフロリダ州をPrimary Stateとし、レジデンシーで行く可能性があった5州にScore Transferしました。ちなみにフロリダの大学を卒業したからといってフロリダをprimary Stateにする必要はありません。

NAPLEXに合格した時点でそのスコアはNALEXの出願で申し込んでおいた各州に送られます。するとそのスコアは州によって異なりますが、半年から1年間有効でその間にMPJE(州の法律の試験)などその州の必須の試験に合格すればその州の薬剤師免許を取得できます。
有効期限が切れた場合は送られたスコアは無効になり、Score Transferでの薬剤師免許の移動は出来なくなります。
私の場合はフロリダ州をPrimary Stateにし、ペンシルバニア州にScore TransferしておいたNAPLEXの結果を使ってペンシルバニア州のMPJEを受験してペンシルバニア州の薬剤師免許を取得しました。

2つ目の方法はReciprocation(交換?)です。
Score TransferはNAPLEXを受験したときにしか出来ませんので、それ以外はReciprocationという方法で薬剤師免許を移動します。
これも州ごとで法律が違いますがメリーランド州の場合、卒業後520時間薬剤師として働いていれば薬剤師免許をReciprocationできます。
もちろんScore Transfer同様、州ごとの必須試験に合格しなければいけません。

ではScore TransferとReciprocationでは何が違うのでしょうか?

  • Score TransferはNAPLEXを受験したときにのみ可能です。
  • Score Transferで薬剤師免許を移動した場合、その州からReciprocationで免許を移送できますが、Reciprocationで移動した薬剤師免許はReciprocation出来ません。

     私の場合
フロリダ州からScore Transferでペンシルバニア州へ移動。
ペンシルバニア州からメリーランド州へReciprocationで移動。
つまり、私は今後フロリダ州とペンシルバニア州から他州へ免許を移動できますがメリーランド州から他州へ免許を移動することは出来ません。

複雑ですよね。私も理解するのに時間がかかりました。

2009年4月22日 (水)

生涯研修

今日は生涯学習(Continuing Education=CE)にステーキハウスへ同僚のレジデントと行ってきました。
アメリカでは各州で異なりますが概ね2年間で30時間のCEが薬剤師免許の更新に必要です。
薬剤師免許のCEはACPE(Accrediation Council for Pharmacy Education)が認証しています。
病院薬剤師の特権は製薬会社が主催するCEに無料で行くことができ、しかも有名レストランや有名ホテルで行われるので一石二鳥でCEに参加することが出来ます。
今まで行ったホテルやレストランを挙げると
The Rittenhouse Hotel
Sheraton Philadelphia University City Hotel

Morton's The Steakhouse
Sussana Foo
Estia

どのレストランも普通に行けば一人50ドルはかかるようなところにCEを獲得しながら行けるというのは忙しいレジデントにとっては絶対に見逃せない特権です。
実はステーキハウスというものはアメリカに来て初めてでした。おいしいものの、日本で同じ値段を出したらもっとおいしいものが食べられるような気がしました。

ちなみに今日のトピックはダプトマイシン(Daptomycin)でした。
日本ではまだ未発売でしょうか?
ダプトマイシンはバンコマイシン・リネゾリドに次ぐ第3のグラム陽性菌に対する抗生物質です(シナシッドもありますがあまり使われていません)。
最近ではバンコマイシンの耐性である黄色ブドウ球菌が出現し始めていますので(VRSA=Vancomycin Resistant S. aureus, VISA=Vancomycin Intermediate S. aureus, hVISA=heterogenous VISAなど)それに対する抗生物質として使われ始めています。
バンコマイシンとダプトマイシンの効果の違いなど多くの点で学ぶべきことがあり、大変有意義な講義でした。

p.s.厳密に言うと今日の講義はCEではありません。今日の講義はACPEに認証されていないので薬剤師免許の更新には使えません。

2009年4月 3日 (金)

薬剤師国家試験

先日日本の薬剤師国家試験の結果が出ました。
母校の先生に結果を送っていただいたのですが、母校の結果はというと

私は結局日米で2回国家試験を受験したわけですが、日本とアメリカでシステムや問題の傾向などかなり違いがあります。
アメリカの薬剤師免許は州ごとに定められており、州を移動する場合免許を移さなければいけません。ただし現在はアメリカの薬剤師国家試験=NAPLEX (North American Pharmacist Licensure Examination)は全州で共通ですので州を移動する際に薬剤師国家試験を受験する必要は大抵(様々な条件が州によってありますので受けなおさなければいけない場合もあります)ありません。
NAPLEXは共通でも各州で薬事に関する法律は異なります。したがって多くの州が採用するMPJE(Multistate Pharmacy Jurisprudence Examination)という試験は州ごとに受験しなければいけません。また、州によっては州独自の法律の試験を実施している州やNAPLEXと法律の試験以外の試験(調剤試験(NY州)や英語試験(MD州))を実施している場合もあります。
私の場合はフロリダ州で薬学部を卒業し、ペンシルバニア州に移動し、またメリーランド州に移動する予定ですのでNAPLEX1回・MPJE3回(各州のMPJE)・メリーランド州に必要な英語の試験の計5つの試験を受けたことになります(メリーランド州はこれからです)。

NAPLEXはコンピューター上で行われ、溜められた問題からランダムに問題が出ます。問題数は約180問(約と言うのは個人によって多少の差があるからです)。150問が採点され、30問前後はテスト問題(採点されません)です。コンピュータですので日本のように1年に1回ではなく休日以外毎日実施されています。仮に落ちた場合はすぐ受けられるのではなく約3ヶ月待たなければいけません(日本の1年よりはましですね)。
試験内容はほとんどが医療薬学です。基礎薬学の問題はほとんど出ません。
薬の名前は成分名と商品名が混合していますので、基本的には商品名も覚えなくてはいけません。
商品名というと日本の場合ジェネリック医薬品にも商品名がついていますが、アメリカの場合"Genric"というのは成分名のことです。例外を除いて特許が切れてジェネリック医薬品として販売されている薬に商品名はついていません。私はこれについては大賛成です。日本にジェネリック医薬品が根付かない理由の一つはここにあるのではないでしょうか?
医師も薬剤師も患者さんもジェネリック医薬品にまで商品名がついていては把握しきれないですよね?!ニュースで日本もそのような方向で動いていると聞きましたが、早くそうなって欲しいものです。

参考にアメリカの薬剤師国家試験の各大学の合格率です。
アメリカのほうが日本より全体的に高いですね。

2009年3月31日 (火)

Staff PharmacistとClinical Pharmacist

アメリカの薬剤師には大きく分けると2つの仕事があります。
一つ目は"Staff"。該当する日本語が見当たらないのでStaffとそのまま使いますが、基本的には医師からの薬のオーダーを監査することが主な仕事です。
通常アメリカでは医師からのオーダーはすべて薬剤師が監査します。
その際"Staff Pharmacist"は薬の用法・用量・相互作用・禁忌などをチェックします。
薬剤師はパソコン上でほとんどの検査値を見ることが出来ますので、それを元に腎機能や肝機能障害の場合の用量など様々な観点からオーダーを監査します。
また、アメリカはテクニシャンと呼ばれる職業があり調剤は基本的にはテクニシャンが調剤するので、Staff Pharmacistはテクニシャンが調剤した薬をチェックします。

一方、Clinical Pharmacist(臨床薬剤師)はもう少し深く患者の状態を把握しながら薬が本当に適切に使用されているかどうかなどをチェックします。
臨床薬剤師の仕事はアメリカの病院でもばらばらです。
私のいる大学病院ではClinical Specialist(臨床専門薬剤師?)という薬剤師が15名ほどいて各専門性を生かして担当の病棟の患者を受け持っています。
多くのClinical Specialistは病棟回診に帯同し、薬物治療方針への提言、用量・相互作用のチェック・薬学情報の提供などなど薬に関することはすべて請け負っています。
私の病院では
外科集中治療室専門薬剤師 (Surigal ICU)
循環器集中治療室専門薬剤師(Cardiac CU)
呼吸器中秋治療室専門薬剤師(Respiratory ICU)
Ventilation rehabilitation unit専門薬剤師(該当する日本語が分かりません)
胸部心臓外科集中治療室専門薬剤師(Cardiothoracic Surgery)
心不全病棟(HF Unit)
感染症専門薬剤師
内科専門薬剤師
が感染症専門薬剤師を除いてそれぞれの専門薬剤師が病棟を担当しています。

中小の地域病院などではClinical Specialistを置いている病院はまだ少数で、臨床薬剤師は半分Staff、半分臨床などの職があったりClinical Coordinatorという職の人が臨床に関することをほとんど請け負っている場合もあります。
地域病院では一般的には回診がないため、私が知る限りでは臨床薬剤師は以下のような仕事をしています。

①ワルファリンの用量調節
②バンコマイシン・アミノグリコシド系などの薬物治療モニタリングに基づいたトラフ値のオーダーや用量調節
③TPN(高カロリー輸液)の調節
④クレアチンクリアランスに基づく腎排泄型薬物の用量調節
⑤IVからPOへの変更
⑥抗生物質の適正使用
⑦薬物情報提供(Drug Information)

病院によってプロトコールを作成している場合は薬剤師は医師の許可なく上記の調節をすることが出来ます。しかしこれらのシステムは病院によって大きく異なりますのですべての病院が同じことをしているわけではありません。

また臨床薬剤師は病院の委員会に出席したりプロトコールを作成したりもします。