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2009年3月31日 (火)

Staff PharmacistとClinical Pharmacist

アメリカの薬剤師には大きく分けると2つの仕事があります。
一つ目は"Staff"。該当する日本語が見当たらないのでStaffとそのまま使いますが、基本的には医師からの薬のオーダーを監査することが主な仕事です。
通常アメリカでは医師からのオーダーはすべて薬剤師が監査します。
その際"Staff Pharmacist"は薬の用法・用量・相互作用・禁忌などをチェックします。
薬剤師はパソコン上でほとんどの検査値を見ることが出来ますので、それを元に腎機能や肝機能障害の場合の用量など様々な観点からオーダーを監査します。
また、アメリカはテクニシャンと呼ばれる職業があり調剤は基本的にはテクニシャンが調剤するので、Staff Pharmacistはテクニシャンが調剤した薬をチェックします。

一方、Clinical Pharmacist(臨床薬剤師)はもう少し深く患者の状態を把握しながら薬が本当に適切に使用されているかどうかなどをチェックします。
臨床薬剤師の仕事はアメリカの病院でもばらばらです。
私のいる大学病院ではClinical Specialist(臨床専門薬剤師?)という薬剤師が15名ほどいて各専門性を生かして担当の病棟の患者を受け持っています。
多くのClinical Specialistは病棟回診に帯同し、薬物治療方針への提言、用量・相互作用のチェック・薬学情報の提供などなど薬に関することはすべて請け負っています。
私の病院では
外科集中治療室専門薬剤師 (Surigal ICU)
循環器集中治療室専門薬剤師(Cardiac CU)
呼吸器中秋治療室専門薬剤師(Respiratory ICU)
Ventilation rehabilitation unit専門薬剤師(該当する日本語が分かりません)
胸部心臓外科集中治療室専門薬剤師(Cardiothoracic Surgery)
心不全病棟(HF Unit)
感染症専門薬剤師
内科専門薬剤師
が感染症専門薬剤師を除いてそれぞれの専門薬剤師が病棟を担当しています。

中小の地域病院などではClinical Specialistを置いている病院はまだ少数で、臨床薬剤師は半分Staff、半分臨床などの職があったりClinical Coordinatorという職の人が臨床に関することをほとんど請け負っている場合もあります。
地域病院では一般的には回診がないため、私が知る限りでは臨床薬剤師は以下のような仕事をしています。

①ワルファリンの用量調節
②バンコマイシン・アミノグリコシド系などの薬物治療モニタリングに基づいたトラフ値のオーダーや用量調節
③TPN(高カロリー輸液)の調節
④クレアチンクリアランスに基づく腎排泄型薬物の用量調節
⑤IVからPOへの変更
⑥抗生物質の適正使用
⑦薬物情報提供(Drug Information)

病院によってプロトコールを作成している場合は薬剤師は医師の許可なく上記の調節をすることが出来ます。しかしこれらのシステムは病院によって大きく異なりますのですべての病院が同じことをしているわけではありません。

また臨床薬剤師は病院の委員会に出席したりプロトコールを作成したりもします。

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コメント

日本で病院薬剤師として勤務するものです。率直な質問をお許しいただけたらと思います。

米国ではStaff Pharmacistが腎機能や肝機能障害の場合の用量など様々な観点からオーダーを監査するとのことで、とても理想的な監査状況だと思いました。恥ずかしながら我々は検査値についてはすべての処方せんについてはチェックできておりません。検査値を含めた処方せん監査ならびに疑義紹介をするには現状の数倍の作業時間が求められるからです。

米国では全ての処方せんの全ての医薬品に対して網羅的に肝腎機能、電解質等に応じた適正量を監査されているのでしょうか?それとも、効率よく業務を推進する何か取り組み等があるのでしょうか?

ご参考にさせていただけたら幸いです。

ご質問ありがとうございます。腎機能低下による用量調節に関しては多くのStaff Pharmacistが網羅していると思います。基本的にはパソコン上にクレアチニンクリアランスが計算されて表示されていますのでその値を元にLexi-Comp http://www.lexi.com/
などの市販のデータベースを見ながら監査します。ただ、脱水状態で血清クレアチニンが高い場合や肥満の場合はパソコンに表示されているクレアチニンクリアランスをそのまま使うわけにはいきませんが、そこまでStaff Pharmacistは監査している時間はありません。そういう場合は臨床薬剤師が後から補正する場合もあります。
肝機能に関してはChild-pugh Scoreを使用する場合もありますが評価が難しいので、ほとんどの場合よほどひどくない限り介入が難しいです。
電解質に関しては規定量と現在の電解質の値とをチェックしながら監査しています。
私の病院では650床程度の病院で5人のStaff Pharmacistが同時に監査しています。本文にも書きましたがアメリカでは薬剤師は基本的に調剤しませんのでその分監査に時間が割けることがすべてのオーダーの監査を出来る理由の一つだと思います。
さらに臨床薬剤師・レジデント・薬学生も様々なところで用量をチェックしていますので、そこで変更することも多々あります。アメリカでの薬学生のころ病院すべての腎機能に基づく用量のチェックをさせられたことがありました。学生としては苦痛ですが、どの薬が用量調節が必要でどのように調節するのか勉強にもなりますので学生への課題としてやってもらうのも一つの方策かもしれません。
あとはやはりパソコンですべての検査値が見れるようなシステムの構築だと思います。アメリカでは基本的に毎日の経過記録とバイタルサイン以外はかなりの情報がパソコンで見れるようになっている病院が多いです。

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